【年金分割】熟年離婚する前に知っておきたい年金のこと
投稿日:2021.10.01
今回は、離婚と年金について考えていきます。
日本における人口動態の中で出生率の減少と共に目立っているのが、婚姻件数の減少と離婚件数の増加です。
厚生労働省の最新の発表によると、2019年のデータで婚姻件数が約60万件だったのに対して、離婚件数は約21万件と、結婚する夫婦の実に3分の1が離婚しているという状況がここ数年の流れです。
その中で、最近は「熟年離婚」という言葉もよく聞かれるようになりましたが、実際に同居期間20年以上の夫婦の離婚件数は増えていて、1985年は2万434件だったのに対し、2019年には4万396件と、約35年で倍にまで増加しています。
※令和元年(2019)人口動態統計月報年計(概数)の概況
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai19/dl/gaikyouR1.pdf
お子さんの自立を契機に熟年離婚をするケースは少なくありませんが、離婚後の年金は果たしてどうなるのか?知っておかないと離婚後に不幸せな未来が待っている可能性が高いです。
離婚はしないに越したことはないですが、知識として知っておいて損ではないことだと思いますので、是非最後までお読みください!
目次
熟年離婚が「離婚貧乏」になりやすい理由
実のところ、熟年離婚は総じて老後の年金受給額の面で苦しくなるケースが多く、「離婚貧乏」に陥りやすくなっています。
年金制度、特に年金分割の制度を正しく理解していないと、老後に双方が「離婚貧乏」になってしまうケースが大いに考えられます。
年金制度、特に年金分割の制度を正しく理解しておかないと、老後に双方とも損をしてしまうケースが考えられるので注意が必要です。
ここからは、離婚後に年金制度がどのように適用されるのか?みていきましょう。
※年金制度について、こちらの記事もチェック!
年金分割制度の内容
2007年の厚生年金保険法改正において、年金分割制度が制定されました。
夫婦の年金を夫と妻それぞれ分けて受け取ることができる制度です。
婚姻中に積み立てた年金分は夫婦の共有の財産といえるため、離婚の際には夫婦で築いた財産を分け合うのが基本となります。
この制度があるから離婚しても老後は安泰だ・・・と考える方が多いですが、ここでいくつか落とし穴があります。以下のとおりです。
年金分割制度注意点
- 分割するのは厚生年金部分のみ
- 自営業者は分割対象外(厚生年金に加入していないため)
- 分割対象は婚姻期間中の記録の部分のみ
- 共働きか第3号被保険者かどうかで分割のしくみが異なる
- 自動で分割されるわけではない
それぞれ見ていきましょう。
分割するのは厚生年金部分のみ
老後に受け取れる年金は国民年金と厚生年金ですが、離婚によって分割されるのは、このうちの厚生年金の部分だけで、国民年金部分に関しては分割されません。
仮に会社員の夫の毎月20万円あったとして、その金額を10万ずつで分け合うわけではなく、20万円のうちの国民年金部分を差し引いた金額を分け合うというしくみです。
自営業者は分割対象外(厚生年金に加入していないため)
世帯主が自営業者の夫婦に関しては、厚生年金が無いため、そもそも分割の対象外です。
分割対象は婚姻期間中の記録の部分のみ
分割されるのは、あくまで婚姻期間中に関する記録の部分のみで、独身時代、および離婚後に納めた部分に関しては分割されません。
例えば、35歳で結婚し55歳で離婚した場合、婚姻期間中の20年間の厚生年金部分のみ分割され、それ以外の期間は分割の対象外なのです。
共働きか第3号被保険者かどうかで分割のしくみが異なる
年金分割をする割合は最大2分の1までの範囲で、夫婦の話し合いによって決めます(合意できない場合は、家庭裁判所へ調停の申し立てなどで決める)
共働きの場合、婚姻期間中の2人の厚生年金を分けることになります。
性別は関係なく、給料が多かったほうが相手に分ける形になります。
ただし、どちらか一方が第3号被保険者(専業主夫および主婦)の場合は、2008年4月以降の婚姻期間中部分の2分の1については、合意がなくても分割することができるようになっています。
自動で分割されるわけではない
離婚して自動で年金分割が行われるわけではなく、年金分割を行う場合には、離婚して2年以内に年金事務所にて手続きをする必要があります。
離婚日の翌日から起算して2年経つと請求権が消滅してしまいますので、年金を意識する時に気づいても遅い・・・という悲惨な結果にならないように、離婚の際に意識しておく必要がありそうです。
熟年離婚と年金額シミュレーション
では具体的に、婚姻期間が25年、妻が専業主婦で、夫の平均報酬月額36万円だった場合における、妻の年金額のシミュレーションを見てみましょう。
詳しい計算は省きますが、婚姻期間分の厚生年金は年間76万9500円です。
分割で妻が受け取れる厚生年金部分は年額約38万円ですので、月額に直すと約3万円程度です。
ここに、妻自身の国民年金を5万円とすると年金額は
月額8万円程度
となりますので、これだと老後の生活費としてはかなり苦しい金額です。
この試算だと夫の目線でも、年金額が3万円減るのはかなりダメージが大きいですね。
まさに「離婚貧乏」まっしぐらといったところでしょうか。
一般的に離婚した場合、婚姻期間が30年以上の夫婦でも、第3号被保険者側の年金受給額は10万円程度になるケースが多く、苦しい前途が予想されます。
DV(家庭内暴力)や耐え難い精神的苦痛など、やむを得ず離婚となるケースも多いため、離婚そのものを否定するつもりはありませんが、老後の経済的な側面を考えると、お互いがストレスなく日常生活を送るための改善の余地があるうちは、離婚ありきではなく、もう少し慎重に考えた方が良いのかもしれません。
まとめ
いかがでしたか?
今回は「熟年離婚と老後の年金」についてのお話をさせていただきました。
長い人生、色々なことがあります。
年齢を重ねて、ふと熟年離婚のことが思い浮かんだ時(思い浮かばないことを願いますが・・・)は今回の記事のことを少しでも思い出していただけたら幸いです。
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